「事業所単位の派遣期間制限」を延長する場合に必要な手続きとは?

◆「事業所単位の派遣期間制限」の延長ルール

同一の派遣先の同一の事業所において、継続して労働者派遣の受入れを行うことができる期間は、原則3年です。

派遣先が同一の事業所において3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、事業所の期間制限に抵触する日の1ヶ月前の日までの間(意見聴取期間)に、派遣先の過半数労働組合等から意見を聞かなければなりません。(1回の意見聴取で延長できる期間は3年まで)


1.「事業所」とは

単位となる「事業所」とは、雇用保険の適用事業所(※)と同じ以下の基準で判断します。

➀場所的に他の(主たる)事業所から独立していること

➁経営(又は業務)単位として人事、経理、経営(又は業務)上の指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること

➂一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等から実態に即して判断

なお、出張所・支所等で、規模が小さく、その上部機関等との組織的関連ないし事務能力からみて一つの事業所としての独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一の事業所として取り扱われます。

一つの事業所としての独立性がない事業所として取り扱うためには、派遣先が適用事業所ではないことをハローワークに申請(非該当承認申請)する必要があります(申請していなければ、その事業所は適用事業所となり事業所単位の期間制限に係る「事業所」と判断されます)。 仮に派遣先の実態が定義と異なる運用をしている場合は、雇用保険法や派遣法において、指導の対象となる可能性があります。


2.事業所単位の派遣受け入れ可能期間のクーリング

同一の事業所における労働者派遣の受け入れ期間がリセットされるいわゆる「クーリング期間」があります。

クーリング期間は、同一の事業所において3か月を超える期間(3か月と1日)の派遣社員の受け入れが1人もいない空白期間があった場合、成立します。


3. 事業所単位の派遣受け入れ期間の延長手続き

派遣先は、事業所単位の期間制限における3年の派遣可能期間を延長しようとするときには、過半数労働組合等への意見聴取を行わなければなりません。

事業所への派遣開始の日から抵触日の1か月前まで(意見聴取期間)に適切な意見聴取手続きを行うことで、事業所単位の派遣可能期間を最長で3年まで延長することができます。(それ以降も同様の手続きにより延長可能)

➀意見聴取

⑴ 意見を聴く相手

過半数労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴取します。意見聴取にあたっては、十分な考慮期間を設けて実施しなければなりません。

〇過半数労働組合

労働者の過半数で組織する労働組合のことで、過半数の分母となる「労働者」には、正社員のみならず、アルバイトやパート社員、嘱託社員、契約社員なども含みます

〇過半数代表者

・労働者の過半数を代表する者で、次の両方を満たしている必要があります。

・労働基準法第41条第2号の「監督又は管理の地位にある者」でないこと

過半数代表者を選出することを明らかにして、投票、挙手等の民主的な方法によって選出された者であること

⑵ 書面による通知

過半数労働組合等意見聴取の相手に以下の2つの項目を書面で通知します。

・労働者派遣の役務の提供を受けようとする事業所

・3年以内の延長する期間

通知の際に意見聴取の参考資料として、派遣受け入れ開始からの派遣社員数と派遣先の無期雇用労働者数の推移等を提供します。また過半数労働組合等が希望する場合、部署ごとの派遣社員数、各々の派遣社員の受入れ期間等の情報を提供することが望ましいとされています。


➁対応方針等の説明

延長に関して異議が述べられた場合は、派遣先は、過半数労働組合等に対し、抵触日の前日までに延長の期間と理由、派遣の常用代替に関する意見がある場合は、常用代替への対応方針を説明しなければなりません。


➂派遣可能期間の延長

意見徴収に関する以下の事項を書面に記載して抵触日から3年間保存するとともに派遣先労働者に周知する必要があります。

⑴ 意見を聴取した過半数労働組合の名称又は過半数代表者の氏名

⑵ 意見聴取の通知事項及び通知日

⑶ 過半数労働組合等から意見を聴いた日、意見の内容

⑷ 意見を聴いて派遣受け入れ期間を変更する場合は、変更した期間

⑸ 意見聴取で異議に対して説明を行った場合は、説明した日、説明の内容

派遣先労働者への周知は、36協定、就業規則同様に事業所内の掲示、備え付けや書面を個別に配布する、電子データで保存して閲覧可能とすることなどにより行います。


派遣先は、受入れ期間を延長した場合、派遣元に事業所単位抵触日の変更を通知しなければなりません。通知の方法は、派遣契約締結時の抵触日通知と同じです。



※意見徴収に必要とされる『意見徴収書』および『意見書』、その他関連フォームの用紙は弊社でご用意が可能です。お気軽にお申し付けください。


質問1

意見聴取を実施することができるのは、派遣開始後いつから可能でしょうか。

回答1

意見聴取は、派遣受け入れ開始から抵触日の1か月前までに実施することとだけ定めているため、期間中いつでも実施可能ですが、受入れ期間中の派遣社員数の推移等を提供することから、受け入れ開始後それなりの期間が経過した後に実施することが望ましいとされています。



質問2

労働者がいない(社長と派遣社員が存在)場合や管理監督者しかいない場合の意見聴取はどのように行えばよいでしょうか。

回答2

労働者がいない場合、意見聴取を行えないことから、受入れ期間を延長することはできません。 管理監督者と派遣社員しか存在しない事業所の場合は、労働者派遣法施行規則第33条の3第2項の但し書きにより、管理監督者に意見聴取することが認められています。



質問3

36協定の過半数代表者に対して意見聴取を行うことは認められますか。

回答3

過半数代表者は、その目的を明らかにして選出しなければなりません。派遣可能期間延長手続きという目的を明示せずに他の目的で選出された過半数代表者に対して意見聴取を行うことはできません。仮に意見聴取を行ったとしても、事実上意見聴取が行われていないものと同視され、労働契約申し込みみなし制度の対象となります。

ただし、複数の目的を明らかにした上で過半数労働者代表を選出することは禁止されていません。



質問4

受け入れている派遣社員全員が無期雇用に転換した場合でも意見聴取を実施する必要はありますか。

回答4

受け入れている派遣社員全員が期間制限の対象外の者である場合、意見聴取の必要はありません。

(一般社団法人 日本人材派遣協会ホームページより引用)


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